正神崇敬会の会員である静岡県のY子さん(60歳)は元県立高校の教師で、現在は「お作法教室」を開いている。気さくなうえに神経が細やかな人なので、教室はにぎわい、多忙な日々を送っていた。
そんなある日の夕刻。親戚の法事から帰ってきたY子さんは、お風呂に入った。疲れた身体をじっくり湯船に沈めてから、身体を流すため浴槽を出ようとしたときだ。前かがみになった後頭部にツーッと血が流れる感覚を覚えたのである。
(おやっ?)
と思って後頭部に手をやって確かめると、何もついていない。出血していないのだ。
(これは頭の中だ!)
とっさにそう感じたのは、Y子さんが人間的にも霊的にもステージの高い人だったからだ。
Y子さんは身体を揺らさないように、そっと風呂から上がると、
「お母さん、いまから病院へ行かなければならないから保険証を出しておいてください」
と声をかけ、注意深く着替えをすませてから119番を掛けた。
「脳溢血の人間がおりますので、救急車をお願いします」
「どなたですか?」
担当者の質問に、
「私です」
と答えるや、
「エッ?」
と、担当者は驚きの声をあげて絶句した。脳溢血の人間が自分で救急車を呼ぶなど、前代未聞であったろう。
まもなく救急車が到着し、脳外科では評判の病院へ運ばれたところでY子さんは意識を失った。すぐさま緊急手術が行われ、生死をさまよった末、Y子さんが意識を取り戻したのはまる2日後のことだった。
病室を訪れた30代の若い担当医は、
「救命のため、脳の深い所のかなり乱暴な手術をしました。ですから……」
後遺症が残ると告げた。また、担当医の顔にも後遺症が残るとハッキリ書いてあったのである。
だが、Y子さんの心は平静だった。たとえ半身不随になろうとも、命を助けていただいたのは神様のご加護であると心から感謝したのだった。
ところが―。
なんと、後遺症はまったく残らなかったのだ。
これには担当医も驚いて、
「不思議です。これだけの大病でなぜ後遺症が残らなかったか、医者の私にも説明ができません。たぶん、あなたの生命力を引き出す何かの力が作用した、としか言いようがありません」
と、率直な感想を述べた。「神」の存在を、担当医はその立場から、”何かの力”と表現したのだった。
宗道会長が回復を神様に祈願お祓いの取次ぎをし、Y子さんに〈神気充電〉を与えたことを、この若い担当医は知るよしもなかった。
大石隆一 著 「日本を代表する超常現象家」より引用