人間に対する影響力の強さから見て、憑依(ひょうい)と因縁とでは、後者のほうがはるかに大きなものです。しかし、単純な憑依による霊障にしても、障りを出している憑依霊の悪質度によっては、かなり手こずることもあります。どこで鑑てもらっても「わからない」「手に負えない」霊障というものもあるものです。
自己中心、妬みや恨み、疑い、卑下、憎しみといったマイナスの感情にとらわれてしまうと、低級霊、邪神、魔神といったよからぬもの(マイナスのエネルギー体)が、磁石に吸いつく砂鉄のように引寄せられてくるものです。濁った心には、濁りの程度に見合った邪神が必ず憑依しています。それはときに、過去生でついたものが、今生に引き継がれるということもあるのです。
また、霊体質の人の場合、ご本人が心がけよく過ごしておられても、さまよっている穢れた霊を出先、旅先などで受けてしまったり、他者に憑いている邪霊、低級霊を受けてしまうこともあるものです。ご本人が霊体質であることを知らず、肉体の病気、心の病気と思って苦しみ、あちこちの病院を転々とする例もめずらしくありません。今回、本書に手記を寄せて下さった会員の方々のなかにも、そうした霊障で苦しんできた事例をあげている方が何人かおられます。
神様のお力をお借りして行う霊障の浄化、解消とはいかなるものか。一つの事例を通してご紹介させていただくことにしましょう。
▶ 商売に失敗、手を出した株がことごとく裏目に
千葉市の井上善郎さんから突然、正神崇敬会にファクスが送られてきたのは平成18年(2006)9月28日の早朝のことでした。その内容は次のようなものでした。
「お世話になります。私は三年ほど前に一つの商売がダメになり、株に手を出しました。プロについてやっていましたが、株を手放したために大損し、その損を取り戻すために今度こそ、今度こそとつぎ込んで、またたく間に大金を失ってしまいました。三年ほどのあいだに一つも当たらず、ピタリ、ピタリとすべてが裏目、裏目に出てしまったのです。夜は夜で床に入ると下から突つかれているような苦しさに襲われて目が覚め、ここ三年半ほど頭痛と胃の痛み、不眠症に苦しんでいます。相当に強い悪霊かなにかに憑かれてしまっているような気がしてなりません。どうかよろしくお願いいたします」
この日、井上さんは個人鑑定の予約をお取りになり、翌10月2日、同居している大橋邦子さんと二人で来訪されました。
井上さんは折り合いの悪い夫人とは十五年前に別居、その後、何年かして邦子さんと知り合い、一緒に生活をはじめたそうです。これまで大橋さんと七、八年、一緒に居酒屋をやってきましたが、赤字つづきで経営が立ち行かなくなり、一番底値のときに、店と土地を手放さざるをえなかったといいます。結果的に、損失は3500万円にも上りました。
その後、株に手を出した井上さん、プロに数百万支払い、そのアドバイスのもとに売買を繰り返しました。ところが、「これは上がる」といわれた株を買うとすぐ下がる、しかたがないから売ると、その三時間後には急に跳ね上がる、といった具合に、すべてが裏目に出て、6000万円近い損を出してしまわれたのでした。
▶方々で鑑てもらうが、「なんの障りもない」という答えばかり
ここまで邪魔が入るからには、なにかよくないものが憑(つ)いているにちがいないと思った井上さんは、方々の占い師や霊能者、祈祷師、お寺などで鑑てもらいましたが、いずれも「なんの障りもない」「これからよくなります」といった答えが返ってきたといいます。
それでも納得できなかった井上さんは、その後、ある新興宗教の先生に鑑てもらい、いわれるとおりにしたところ、損の上塗りをしただけで、最終的には「手に負えない」と断られてしまいました。結局、原因は分からずじまいで、問題の解決には結びつきませんでした。
たまたま電話帳で正神崇敬会のことを知り、先のとおり、私あてにファクスを送られたのでした。
「大橋と二人で仕事をするようになってから、一つもいいことがないんです。他所で視てもらっても『なんでもありません』の一点張りでちっともよくなりません。憑いているものをなんとか取ってください」
▶強い魔神の障りを3回のお祓い浄霊で取っていただく
正神界に霊査取次ぎをお仕え奉りましたところ、井上さんには、稲荷邪神、稲荷系魔神、人魔が憑いていることが明らかになりました。
「穢れ落ちて、邪神化したお稲荷さんは眷属霊ですから障りはキツいものですが、手先で使われているだけです。奥で稲荷邪神を操っている女の魔神が陰のボスです。とてつもなく強い邪魔ですが、神様は三回のお祓い浄霊で取ってくださるとお示しくださいました」
初回のこの日は、井上さんの運命と心身に障りを出している、前線部隊でうごめく気の毒な稲荷眷属霊多数の浄化、神界お引き上げのご守護を、稲荷神界皇之臣神様を介して、佐田彦大御神がくださいました。
翌日の10月3日には、第二回目と、第三回目の神界取次ぎをつづけてお仕え奉り、正神界の神々様の格別のご守護をたまわり、通常、考えられない速さで、井上さんに障りを出している魔神のお祓い浄霊は終了したのでした。
三日後の10月6日、井上さんからお礼の電話がかかってきました。
「おかげさまで、すっかり体調がよくなりました。頭の重苦しいものが取れて胃も軽くなりましたし、夜も眠れるようになったんです。先生のおっしゃるとおりでした。ありがとうございました」
▶運を強くするために
「それでですね、今度は運を強くするお願いはできますか」
井上さんは私にこうお尋ねになりました。
正神にすがって助けていただきたいというお気持ちと、たとえ間違った欲心、迷いを持ちながらも、それなりに向上したい想いを持たれている方の場合には、神様は手を差し伸べてくださいます。逆に、魂のレベルが低い人ほど神理をなめてかかり、お安い計算や打算とともに、恥も外聞もなく醜態をさらけ出すのです。
「できますよ。井上さんの様子を拝見しておりましたが、もちろん大丈夫です。そのためには、ご自宅に神様をお祀りして、心を込めて朝夕の神詞を奉上して、その祈った心でコツコツと日々の御霊磨きの行に励まれることです。そしてときどきは、神様のところへ参られて、魂のお祓い浄霊のパワーをいただいて努力を重ねていかれると、だんだん運が強くなるんです」
私の説明を聞くうちに、井上さんの返事の声がしだいに小さくなっていきました。少し間を置いて、井上さんの横にいた大橋さんが、なにやらすまなそうな口ぶりで話しはじめました。
「すみません。じつは私どもは○○会(仏教系の新興宗教)の会員でして、神様の御札は家に祀れないんです。そんなに熱心にやっているわけではないんですが、会員の友だちがちょくちょく遊びに来るものですから。その人たちの目があってまずいんです」
そのような事情がある方には、救済処置として、朝は太陽に向かって、夜は北の天空はるか彼方の紫微宮(天之御中主大御神の主座)に向かって、心を込めて神詞をお唱えするという方法があります。私は大橋さんにそう説明いたしました。
▶自らの業に気づき、前世からの魔神を祓って魂の修行に
翌日、大橋さんからファクスが入りました。
「先日は井上がありがとうございました。じつは、井上に憑いている魔より、私に憑いている魔のほうが、井上のことを困らせるように仕向けているように感じられてなりません。自分がとっている行動が、自分の意志とは関係なく、何かに動かされているように感じられるのです。株のことでも、胸騒ぎがして私が動くと、わざと損をさせようとしているかのように、悪いほうに、悪いほうになっていたのです。9日には、井上をみていただくようにお願いいたしましたが、現在、私のほうが頭痛その他で体調が悪いため、よろしくお願いいたします」
予約日の9日、井上さんと大橋さんは揃っておみえになりました。
「前回、前々回と先生にお祓いしていただいて私は楽になりましたが、大橋のほうが頭がズキズキ痛んでいたんだそうです。ピタリ、ピタリと悪いほうへ向かわせる貧乏神を取ってください」
井上さんから、このような願い出がありました。大橋さんは脚も痛むとのことでした。正神界へ霊査の取次ぎをお仕え奉りましたところ、大橋さんの女の業の奥に、根深い、根源的ともいえる強い魔神、ナミ魔神が憑いていることが明らかになりました。それは、大橋さんが前世で芸者をしていたときからつけていた魔神だったのです。
「神様はこの根深い魔神を三回のお祓い浄霊でご浄化くださるそうです」
お祓いが終り、正神界の神々様から三分の一のご浄化をいただいた大橋さんの頭痛はその場で取れ、楽になられました。
翌日、つづけて二回のお祓い浄霊を受けると、ナミ魔神は取れました。
ご自身の業に気づき、コツコツと堅く生きるように心の切り替えを図るべく、その日、大橋さんは正神崇敬会の神詞をお受けになり、魂の修行を開始されました。
正神に心を合わせて、心正しく励まれれば、だんだんにいい方向へと運が向かうのは間違いございません。
神通霊能者 笹本宗道著 「宇宙神道―神々の救済」 より引用