-本話は心霊相談(霊能相談)のご依頼者に正神崇敬会初代会長の笹本宗園が、霊能者として自身の霊能開発に取り組んで初期の頃の古典的な『霊術』を駆使しての事例紹介です。
いくつかの段階をへて『霊術』は、(あらゆる宗教の源流である)古神道の神々様から厚い守護(加護)を賜り、祈願お祓いの強力な浄化力を発揮する正神崇敬会独自の『神法』へと進化を果たしました。
笹本宗園の神の道の教えと『神法』を継承した神通霊能者の現会長の笹本宗道は、使い方によってはもろ刀の剣にもなりかねないそれを、強力なお祓い(浄霊除霊)の浄化力と安定性を両立して発揮し続けられる『宇宙神道の神法』へと昇化させて、悩み相談・心霊相談・病気平癒・運命の改善強化・心願成就の取次ぎに参られる皆様の改善・解消・解決を目的として神に奉職いたしております-
肌寒いある日の早朝、私宅の電話が鳴りました。電話機をとりあげると五十代と思われる落ち着いた男性の声で、「こんにちは、早速ですが午前九時頃にお伺いして色々と鑑てもらいたいことがありますが、ご都合は如何でしょうか」ということでした。かなり急いでいる感じでした。
この方がA市に住む大沢三男さん(仮名・58歳)で、私の住む市と隣接していて距離的には比較的近くに住んでいるとのことで私宅のことも予めご存じでした。
大沢さんは健康上の問題で運勢の面から鑑てほしいということでいらっしゃったのですが、ご相談の内容は霊能者にみてほしいというものでした。「具体的にはどういうことでしょう?」と尋ねますと、「実は眼と足が悪くなって医師の治療をうけていますが少しも治らないのです。いや段々と工合が悪くなってくるのです。医師を信頼していますが、どうも変ですから先生にも鑑てもらいたいと思って伺いました」との由でした。
大沢さんの来意は「病占」を求めてのお越しでありましたが、私は「易占」によってのみの判断だけでなく、この場合は「霊障」の面からも疑ってみるべきではないかと思い易占と心霊の二面からの究明をしようと考えました。そこで易占でいう「筮前の審事」心霊的には事前の「事情聴取」のために前後の事情・経過・症状を伺いました。大沢さんが語られた眼と足の痛みに関する内容は次のようなものでした。
大沢さんは元来丈夫な方で、つい二年前までは病気で寝たことが一度もない位健康に恵まれて来たということです。仕事は昼夜交替制などがあってかなりきつい職場ですが、たまに風邪をひく程度のことで医者知らずで通して来たとおっしゃられるのです。ところがちょうど二年位前から急に健康状態が悪くなってしまい、以来二年間は継続的に診療所通いの身となり注射や薬の厄介になっているというのです。
その一つが「眼の病気」です。二年前に突然に両目が真赤に充血してしまったので、何でそうなったか心配で眼科医の診察をうけました。この時は治療後二~三日で充血は治りました。これで完治したと思っていますと、約一ヶ月後、又同じように両眼が真赤に充血して目がかすんで来たというのです。再び眼科医の治療を受けますと、また二~三日で充血は引いてしまいます。妙なことだと思いながらも治り切っていなかったのだろうと思い、再度治療でもう大丈夫だと考えていたということでした。ところが翌日もまた同じように両眼充血現象が起こってしまったというわけです。これまた二~三日で充血は引いてしまう……。こうなると、また次の月も来るのではないかと気味悪くなりましたが、果たして招かれざる両眼充血は翌月もまたおそって来たというのです。以後は、両眼赤化の感覚が徐々に縮まり、半月に一回、十日に一回、一週間に一回というようになって、現在は週に一回間隔で両眼の充血が現れるということです。
大沢さんは眼鏡をはずして私の前に顔を突きだし、両眼を大きく開いてみせました。今は赤化が消失しつつある状態だということで両眼の白眼の部分に真赤な島が小豆大に残留していました。
「お医者さんはどう診ておられますか?」と尋ねました。「いや、お医者さんはお手あげです。原因は不明だと言って頭をかしげております。週に二回注射をして薬はずっともらって飲んでいるのですが、一向に効きません。私が今月もまたでましたという度に、この頃ではお医者さんの方が申し訳なさそうにしています」との答でした。
もう一つの症状は右足の膝が慢性的に痛んで、これまた別の診療所で治療を受けておりますが痛みは一向に治らず、こちらの先生も原因不明ということでサジを投げている恰好であるというのです。
「神経痛とか、リウマチとか、病名があるのではありませんか?」 「いや、そういう反応がハッキリしないというのです。医学的にみれば特にどういったということではないと言われます。ただ痛むのは私ですから確かに痛いんです。仕事にも大変支障があります」と大沢さん。見れば、大沢さんが座っている姿勢も右足を投げだすような恰好でした。
私はここまで大沢さんのお話を伺って、いよいよ霊障の疑いが濃厚と考えながらも予断は軽卒にすべからずと自分に言い聞かせながら筮をとったのでした。
得卦は「火天大有の二爻変」眼症のほか数病併発の卦であり、軽症とあなどっていると薬効あらわれず、治療は困難で病勢も次第に昂進して手遅れになる可能性をもつという大変危険なものでした。
霊的な側面からこの卦をみても死霊の憑依を示しており、放ってはおけない状態と判断しました。霊の活動は益々盛んになることを示していますので、現在の治療だけでは次第に抜き難い難症に陥るばかりであると判断しました。
ここで私は、大沢さんの身内、先祖様の関係についての質問を重ねました。祖父母、父母などが亡くなった時の病気、年齢など、特に眼症があった人、膝の痛みがあった人を中心に色々と尋ねました。
その全部の内容は省略しますが、大沢さんが幼児の頃に亡くなったおばあさんが、死因は老衰だったと聞いているが、たしかに眼の性があまり良くなかったと聞き伝えているということでした。その他には眼の悪かった者は心当たりがないということです。膝に痛みについては知らないということです。以上のことを伺って、次の霊査に入りました。
大沢さんに正座、瞑目、合掌して頂き霊査を始めました。間もなく大沢さんの瞼は霊動を始めました。手の先もブルブルと微動を続けています。
私は頃合いをみて大沢さんに浮霊しはじめている霊に向かって質問を発しました。「ご霊さん、私の声が聞こえますか?」 反応を静かに見守りました。しかし大沢さんの動きは同じレベルの状態を続けるだけで殊更な反応を現しません。
「ご霊さん、あなたは大沢さんのご先祖さまですか?」と私は次の質問をなげてみました。しかし、反応は今まで通りで特別な変化はみられません。
思い切って、「ご霊さん、あなたは大沢さんのおばあさんではありませんか?」と聞く。しかし大沢さんにはこれでも反応は現われない。”かなり痛んでいるな、老衰のせいかな?”と私は独り考えをめぐらしました。そしてこの状態では浮霊が充分ではないので、霊査が困難であることを悟りお祓い浄霊の心霊治療を先行させることにしました。
大沢さんを伏臥させて、まず背面全面を浄めます。特に痛みのある右膝の後部を重点部位とし後頭部をも充分に浄めます。あと体を仰臥して頂き前面から体の表側全般を浄めた上、肝心の眼を集中的に神霊治療(心霊治療)をしました。お祓い浄霊の治療中は殊更に変ったこともなく、90分ほどのお祓い浄霊治療を終わりました。ここで大沢さんは出勤途上のために次回の治療日を約束して帰られたのです。
それから一週間後、大沢さんが第二回目のお祓い浄霊治療に来訪されました。部屋に通り私と対座するなり、
「先生、あれから眼の赤化部分が大分小さくなりました」と切りだされたのです。「これ、今日はもう消えてしまっています」と言われます。
早速霊査を行なってみました。大沢さんが座すること数分、目と手にかなり大きなバイブレーションが生じて来ました。口許もヒクヒク動き、かなり浮霊して来ている状況が看取されました。
頃合いを見計らって大沢さんに出現して来た霊に向かって私は尋ねました。「大沢さんに憑いているご霊さん、あなたはこの方のご先祖様ですか?」すると大沢さんの瞼は急激に動き、恰かもこの問に応じて肯定の意思を表示しているかのように見えました。
「ご霊さんは目で返事をされましたね」と言うと、また同様に瞼を急激に動かしました。そこで、「あなたは眼の病気で辛いのですか?」と尋ねると、またYESという返答があったのでした。瞼の動きと共に手の振動も一緒に起こり、首も少しばかり前へ肯く様に感じられました。
「ご霊さん、あなたはこの大沢さんのおばあさんではありませんか?」と次の質問を発しました。大沢さんに出現している霊は、瞼は勿論、手、体まで震わせて大きく肯定の応答を示したのでした。
「大沢さんのおばあさん、大沢さんの眼が悪かったのはあなたの持っていた痛みが現われていたんですね」と言いますと霊動は益々強くなりました。
「ところでおばあさん、前回初めて神様からお祓い浄霊を頂いて幾分楽になりましたか?」と尋ねます。霊動による反応は著しくありました。「おばあさん、この浄めを頂くとあなたの眼は次第に治って来ますよ。そうなると大沢さんの眼も一緒に治りますが、あなたは大沢さんの眼に自分は眼が痛いんだという知らせをだし続けていたんですか?」と尋ねました。これに対しても霊動は激しく、大沢さんの目に涙が浮かんで来ました。
「おばあさん、あなたは早く楽になって天国へゆきたいと思いますか?」大沢さんの目からは二筋の涙の軌跡がほほをつたわって流れ落ちるのでした。
「おばあさん、大沢さんの膝が痛んでいますが、これも祖母さんの痛みでしょうか?」と尋ねます。大沢さんの目・手・体は強く動き、これまたおばあさんの痛みであることが確認されたのです。
ここまで判明すればあとの措置は大変容易です。私はいったんおばあさんの霊を鎮静させて、早速二回目のお祓い浄霊の神霊治療(心霊治療)に取り掛かりました。そして眼の部分を集中的にお祓い浄霊治療しました。一時間半ばかり施療してお祓い浄霊の神霊治療(心霊治療)を終わりました。
第三回目のお祓い浄霊治療は、それから九日後に行ないました。大沢さんから伺った報告によれば、第二回目のお祓い浄霊治療以後今日までの間に従来ならば当然生ずべき眼の変化が発生しなかったということでした。一週間毎のサイクルになっていた眼の充血がなかったというのです。第三回目のお祓い浄霊治療に至るまでの間に、眼の方は治ってしまったかに見えます。しかし念のため、今回も眼のお祓い浄霊治療を40分程おこない、あと50分ほど右膝を集中的にお祓い浄霊治療しました。
その後二週間ほどの間隔をおいて第四回目のお祓い浄霊治療を行ないました。それ以後の状況を伺いましたところ、その後の眼の赤化は起こらず、治ってしまったと思われるということでした。膝の方も大分楽になり、坐ったり立ったりする動作がスムースにゆくようになったとのことでした。そこで今日は膝の方だけを集中的にお願いしたいとのことでした。
祖母霊の感じを聞いてみようということで、大沢さんに正座姿勢をとって頂きました。今日の大沢さんの坐り方は大変楽になっている素振りでした。「おばあさん、眼の工合は如何ですか、楽になりましたか?」大沢さんの口許が動き、首がうなずきの動作を示しました。「それはよかったですね。ではもう眼のお祓い浄霊治療はしなくても大丈夫ですか?」と重ねて聞きます。大沢さんの首は大きく頷いたのでした。「わかりました。それでは今日は膝の方を充分に治療しましょう」こう言って私はお祓い浄霊治療に取り掛かりました。
大沢さんを伏臥させ膝の裏を一時間集中的に浄めました。更に仰臥させて前部より膝頭とそのまわりを30分ほど集中的にお祓い浄霊治療しました。こうして第四回目のお祓い浄霊治療を終わりました。
それから一ヶ月以上経って大沢さんが来訪されました。暫く猶予期間をおいてその後の経過を自分自身で検証したかったということでした。
「検証の結果は如何でしたか?」と尋ねますと、「いや、全く驚きました。あんなに苦しんだことが全く嘘のように思えます。すっかり楽になり、前々の何でもなかった頃と同じですよ。老境に入ってこんなに健康を取り戻せるなんて全く夢のようです」と感じ入ったように答えられました。
「では眼も足の方も大丈夫ですか?」と念を押します。大沢さんは、「大丈夫ですよ」と言いながら坐ったままで足を伸ばし、上方に上げたままの姿勢で素早く曲折を繰り返して見せました。
「今日はお祓い浄霊の治療はいらない位ですが、折角お伺いしたのですからざっとやって下さい。軽くやって下されば結構です」と言いながら笑顔をみせられました。こうして五度目、最後の仕上げをしました。五度目の来訪は完治の報告とお礼が主題でした。
こうして大沢さんは、気懸りな霊障を克服したのでした。
神通霊能者 笹本宗園著 「霊能開発の旅路」 より引用